【実際の医薬品も紹介】ラセミックスイッチについて解説

- ラセミックスイッチが何か説明できる。
- ラセミックスイッチにより開発された医薬品を列挙できる。
記事を読んだ方がこうなれるように解説していきます。

101回に出題されてるよ!
ラセミックスイッチとは

ラセミックスイッチとは、
ラセミ体として使用されている医薬品の内、片方の光学異性体のみを新たな医薬品として用いることです。

添付文書を見れば一目瞭然だよ!

多くの医薬品は鏡像異性体(ラセミ体)という表記がありますが、光学分割された医薬品(エスゾピクロンなど)はその表記がないので異性体について判断することができます。
ラセミックスイッチを行う理由
- 薬効を高める。
- 投与量を減らす。
- 副作用軽減。
などの利点があるのでキラルスイッチによる医薬品開発が行われています。

メリットがあるからこの手法が用いられているよ!
ラセミックスイッチの医薬品

これから何度も出てくる”レボ”はL体という意味だよ!

レボフロキサシン
ラセミックスイッチの第一人者と言ってもいい医薬品です。
レボフロキサシンを機にラセミックスイッチ医薬品が開発されるようになりました。

レボフロキサシンはラセミ体であるオフロキサシンのS体だけを抽出した医薬品です。
S体はR体と比較して
- 抗菌活性が強い。
- 不眠の副作用が1/3程度と少ない。
- 水溶性が10倍高い。
という特徴があります。

水溶性が高いから注射剤への開発に繋がったよ!
レボセチリジン
第二世代抗ヒスタミン薬のレボセチリジンは薬効があるR体のみを抽出した医薬品です。


レボセチリジンの投与量はセチリジンの半分で済むよ!
エスフルルビプロフェン
NSAIDsのフルルビプロフェンのS体のみを抽出したエスフルルビプロフェンは、R体よりも薬効が高いです。


ロコア®テープは過去に出題があるよ!
エソメプラゾール
オメプラゾールのS体のみを抽出したエソメプラゾールはR体と比較して安定した効果が期待できます。

効果の差はCYP2C19が影響しており、
R体
⇒ほとんどがCYP2C19で代謝される。
S体(エソメプラゾール)
⇒約7割がCYP2C19で代謝される。
CYP2C19は約20%の日本人で活性が低いPM型と言われています。
R体よりもS体の方がCYP2C19による影響を受けにくいため、安定した効果が得られやすいと言えます。

ラセミ体の分離は国試でも出題されてるよ!
エスゾピクロン
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のゾピクロンのS体のみを抽出したエスゾピクロンは副作用軽減を目的として用いられています。

エスゾピクロンはラセミ体であるゾピクロン(アモバン®)と比較して
- 苦み軽減。
- 反跳性不眠、退薬症状、耐性が少ない。
という特徴があるので中止・減量しやすい薬剤になっています。

絶対配置が違うだけで副作用が軽減されるのはすごいね!
エスシタロプラム

日本で未承認のシタロプラム(ラセミ体)の内、薬効があるS体のみを抽出したSSRIです。

おまけ:クロルフェニラミンのdl体とd体の違い

ラセミックスイッチ医薬品ではないですが、クロルフェニラミンはd体とl体で効果に差があります。
l体には抗ヒスタミン作用がないので用量はd体はdl体の2倍になります。

クロルフェニラミンはOTCにも含まれてるから要チェック!
まとめ:ラセミックスイッチを理解して医薬品の理解に繋げよう!

ラセミックスイッチは国試にも出題されているのもそうですが、何より実際の医薬品に応用されている重要な原理です。

ラセミ体の重要性が伝われば嬉しいです!
ラセミックスイッチに関する問題は101回に1度出題されたのみですが、
ラセミックスイッチ医薬品は多いので今後出題される可能性は十分にあります。