バレニクリンの塩基性に関する問題【薬剤師国家試験107回問210,211】

35歳女性。喫煙歴15年(1日20本)。
以前から、ニコチンガムやニコチンパッチによる禁煙を試みたが失敗を繰り返していた。
今回、禁煙外来を受診し、ニコチン受容体の部分刺激薬であるバレニクリン酒石酸塩錠による禁煙を試みることになった。
女性は、医療機関でニコチン置換療法とは異なる治療法であると説明を受け禁煙に意欲的だが、また失敗するのではないかと不安にもなっている。
問210
薬剤師は患者の不安を和らげるため、今回の禁煙療法の特徴について説明した。説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ニコチン置換療法と異なり、治療開始時は薬を服用しながら喫煙が可能です。
2 ニコチンを補充しないので、治療中に抑うつ気分や不安、イライラが強く出ることがありますが、一時的なものですので、そのまま服用を続けてください。
3 お薬にはニコチンが含まれていませんが、禁煙による離脱症状やタバコに対する切望感が軽減します。
4 途中で禁煙がつらくなったときは、ニコチンパッチ剤との併用療法に切り替えるこができます。
5 ニコチンガムと同じように、主に口腔粘膜から有効成分が吸収されるので、炭酸飲料やコーヒーでの服用は避けてください。
- 解説・解説
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答え:1と3
1
⇒バレニクリン服用開始後1週間は喫煙可能。以下、下図参照。
類題ニコチン製剤の相互作用【薬剤師国家試験110回問266,267】
問211
禁煙療法に用いられた薬物の構造から、ニコチン性アセチルコリン受容体との相互作用に関わる化学的性質として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 バレニクリンの共役酸のpKaは4付近である。
2 共に生体内でカチオン性を示す窒素原子をもつ。
3 バレニクリンには鏡像異性体が存在する。
4 ニコチンの不斉炭素はR配置である。
5 ニコチンのsp2混成窒素は水素結合受容体として働く。
- 解説・解説
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答え:2と5
1
⇒バレニクリンのpKa(9.2)を覚える必要はなく、大体どれくらいのpKaが塩基性物質か判別できる様になればOK。まずは各物質のpKaを見てイメージを付けよう。
(下表)主な物質のpKa物理系薬学Ⅱを参考に作成 表をみると、ざっくり一般的なアミン(アンモニアなどの脂肪族アミン)はpKaが9以上であることが分かる。
逆に弱酸は4付近であることが分かる。
バレニクリンは第3級アミンを含む塩基性アミンが3つある塩基性物質なので、
選択肢のpKa4は不適切であると考えられる。
3
⇒バレニクリンは対称面があるのでアキラル、つまり鏡像異性体は存在しない。4
⇒ニコチンの不斉炭素はR配置。5
水素原子:供与体(ドナー)
窒素原子:受容体(アクセプター)101回でも水素結合について問われてるよ!
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